日本人が中国語を発音すると、各単語の切れ目が曖昧で、なんとなくメリハリがない発音になりがちです。
中国語では起きない連音
英語ですと、「talk about]」と言うと、子音の[k]と母音の[ə]がくっついて、[kə]と音が変化します(=talk bout [tˈɔːkəbάʊt])。あえてカタカナで書くと、「トーカバウト」のようになり、talkの子音kとaboutの母音aがくっついて発音されることがあります。
これをリエゾン(連音)といいますが、中国語の場合、リエゾンは基本的に起きません。
欧米人が中国語を学ぶと、”天安門”(Tiān’ānmén※)を、「ティエナンメン」というように、tianの最後のnと、anの最初のaを連音させてしまいます。中国語では、これは間違った発音になります。
ここで「声門閉鎖」という概念を紹介します。
声門閉鎖を理解すると、なぜそれが間違いになるかがわかります。
※隔音符号(’)
「a」「o」「e」の文字で始まる音節が他の音節の後に来るときは、区切りを明確にするために「’」(アポストロフィー=隔音符号)の記号を入れることがあります。例えば、「西安」の声調は Xi’anと書きます。隔音符号がないとxi anとなり、xianという1音節なのかxiとanの2音節なのか誤解が生じてしまいます。天安門もtian anかti a nanなのかわかりづらくなってしまいます。
声門閉鎖とは?
声門閉鎖とは、端的にいうと「促音」です。「がっこう」の「っ」のようにつまる音(促音)です。
この音は小さな「つ」ではなく、音がつまることを表す記号といえます。
実は中国語にもこのような促音(=声門閉鎖)が存在しています。しかし、日本語のように「っ」と表記されるわけではありません。なので、普通、その存在に気づくことはないでしょう。
声門閉鎖はいつ起きる?
中国語の声門閉鎖は子音のつかない母音の前で起きます。
a, o, e, i, u, üなど(その他、鼻母音、複母音など合計38個)直接母音から始まるものすべてです。特に「a」「e」「o」から始まるものに顕著に出ます。
日本語の声門閉鎖は「がっこう」の「がっ」のように母音の後ろに来ますが、中国語の場合、先に来ます。なので、日本人にとってイメージしにくいかもしれません。
あえて厳密に考えると、中国語の「a」を日本語で表記するならば、「っあ」のようになります。
(ただし、日本語の促音(小さい「つ」)ほどはっきりしません。もっと弱いです)
これが先の英語などで見られるリエゾン(連音)が起きない理由です。
それゆえ、”天安門(Tiān’ānmén)”は欧米人が発音するような「ティエナンメン」とはならず、また”飢餓(Jī’è)”は「ジエ」はなく、「ジーオー」となります。
また、声門閉鎖ほど明確ではないですが、直接母音から始まる音以外(子音など)でも、前後の音で混じることがなく、1つずつ区切るのが特徴です。
少し、ためをつくりょうなイメージを持ちましょう。
メリハリを意識してネイティブに近づこう
冒頭に書いたとおり、日本人の中国語は、単語と単語の区切りがあまりはっきりせず、中国人からするとダラダラした印象を持たれてしまうことがあります。
この声門閉鎖を意識して、メリハリのある中国語を発音していきましょう。